東京高等裁判所 昭和49年(う)1845号 判決
被告人 浜口利男
〔抄 録〕
そこで記録を調べてみると、被告人は本件において、昭和四八年一一月一一日に自動車の酒酔運転をしたもので、その酔いの程度は、前記控訴趣意第一に対する判断中に示した程度に達していて、幸いに事故には至らなかったものの、まことに危険な所為である。それに被告人には昭和四二年に酒気帯び運転等による罰金七、〇〇〇円、同四五年に酒気帯び運転等による罰金一八、〇〇〇円、同四七年には酒酔い運転による罰金三三、〇〇〇円と道路交通法違反による罰金前科が多く、しかもさらに、同四九年二月一四日には酒酔い運転により懲役六月執行猶予三年の裁判(同年三月一日確定)を受けている。かような事情から判断すると、原判決の量刑は相当であり、刑の執行を猶予すべき理由は見出しがたいように思われる。
ところで、前記確定した執行猶予の判決事件における酒酔運転の犯行日時は、昭和四八年九月二八日であり、本件の犯行日時はその後の同年一一月一一日で、これは前記確定判決のあった罪と併合罪の関係にあり、もし、確定判決の事件の言渡までに、当該裁判所に本件の存在が知られていれば、被告人は併合審理を受けることができたものと認められるものであるが、当審における事実取調の結果明らかにされたところによると、被告人は確定事件の審理(第一回昭和四九年一月三一日)に先立ち、弁護人(国選)との打合せの際、余罪にあたる(本件当時は警察における取調が終了していたのみで、検察官による取調は、確定事件の言渡当日で右言渡の後であり、起訴は確定事件の確定当日である)のことを弁護人に告げたところ、それは裁判所では聞かれない限り言わないようにと指示され、敢えてこれを裁判所に対して告げなかったものである。
さて、もし、被告人に対する本件原判決の刑が確定すれば、前記確定判決の執行猶予も取消されて、被告人は合計一一月の刑に服することとなるのであるが、他方、もし右のような弁護人の指示がなく、被告人が本件を申し出て、前記併合審理を受けられたものとすれば、実刑は免れ得なかったものとしても、一般的に見て、その刑期が懲役六月を超える可能性は、おそらく少なかったろうと推測される。そうであるとすれば、原判決の言渡した刑は、前記のような情状のもとでは、結局のところ、重きに過ぎるといわざるを得ないので、論旨は理由がある。
(矢崎 大平 本郷)